「子どもの『心の居場所』としての家庭科の役割」

【意義と目的】
 不登校や保健室登校の問題は、特定の子どもにしかみられない問題ではなくなってきている現状がある。これを学校の中に「心の居場所」がない状態ととらえ、「心の居場所」を作り出すことで問題解決の道を探ろうとする考え方がある。学校での居場所を見失ってしまう原因の一つに、教科の学習評価が自己否定感を生み出す現状がある。学校のもっとも基本的な役割は教科の学習にある。したがって、だれもが教科学習の中で自分の存在を肯定し、居場所を見いだせることが重要であるし、家庭かがその一躍を担えたら幸いである。
 そこで、子どもの実態を把握した上で、「心の居場所」に関して教科がどのような役割を担っているかを分析し、特にその中での家庭科の役割や課題を探ることを目的とする。

【調査の方法】
 第6学年の子ども(東京都内の国公立小学校の児童676名:男子342名、女子334名)を対象に質問紙方によるアンケート調査を1997年5月中旬から6月上旬に実施。有効回収率は100%。

【結果及び考察】
 家庭科が子どもの「心の居場所」として「自己発揮できる場所」すなわち、自己肯定できる教科であるかどうかの現状と可能性を探ってきた。家庭科の教科イメージとして、子ども達は自分にとって役に立つ教科であると評価し、家庭科は努力次第で成績が上がる教科と見なしているさらに、家庭科は創造的な要素があり、子どもの興味・関心が持続し自己肯定感が得られることに繋がる可能性が高い教科である。
 そこで、家庭科の今後のありかたとして、第1に、家庭科を通して、子どもに「達成感」「生きがい」をもたせることを意図した内容を組立て教育方法を企画すること、第2に、評価のあり方の工夫、第3に、教師自身のジェンダーバイアスの是正、第4に、親のジェンダーバイアスの是正、第5に、家庭科の学習内容と方法の工夫が必要であろう。